フランチャイズのメリット・デメリットを徹底解説

「自分のお店を持ちたい」「独立して起業したい」という夢を抱えながらも、ゼロからビジネスを立ち上げる不安を感じている方は少なくありません。

そんなとき、選択肢のひとつとして注目されるのがフランチャイズという仕組みです。

コンビニエンスストアやファストフード店、学習塾やフィットネスジムなど、わたしたちの身近にある多くの店舗がフランチャイズ方式で運営されています。

すでに確立されたブランドやノウハウを活用できるため、経営の経験がない方でも比較的スムーズに開業できる点が大きな魅力といえるでしょう。

しかしながら、フランチャイズにはメリットだけでなく、知っておくべきデメリットも存在します。

ロイヤリティの支払いや本部からの制約など、加盟前にしっかりと理解しておかなければ、開業後に「こんなはずではなかった」と後悔する可能性もあるのです。

この記事では、フランチャイズへの加盟を検討している方に向けて、メリットとデメリットの両面を詳しく解説していきます。

フランチャイズの基本的な仕組みから、成功するためのポイントまで網羅的にお伝えしますので、ぜひ最後までお読みください。

フランチャイズの仕組みと特徴

フランチャイズのメリットやデメリットを正しく理解するためには、まずその仕組みを把握することが大切です。

ここでは、フランチャイズとはどのようなビジネスモデルなのか、そして直営店とはどう違うのかについて詳しく見ていきましょう。

基本的な知識を身につけることで、自分に合った開業スタイルかどうかを判断しやすくなります。

フランチャイズとはどんなビジネスモデルか

フランチャイズとは、本部（フランチャイザー）と加盟店（フランチャイジー）が契約を結び、双方が協力しながらビジネスを展開していく仕組みのことです。

加盟店のオーナーは、本部が持つブランド名や商標、経営ノウハウ、商品・サービスなどを使用する権利を得られます。

その対価として、加盟店は本部に対して加盟金やロイヤリティと呼ばれる費用を支払います。

一般社団法人日本フランチャイズチェーン協会の調査によると、2022年度時点で国内のフランチャイズチェーン数は1,282チェーン、店舗数は約24万8,000店舗にのぼります。

売上高の合計は約27兆円にも達しており、日本経済において非常に大きな存在感を示しているのです。

フランチャイズビジネスの主な構成要素は、以下のとおりです。

構成要素	内容
ブランド・商標	本部が確立した店舗名やロゴマークなどを使用できる
経営ノウハウ	店舗運営のマニュアルや成功事例などが共有される
商品・サービス	本部が開発した商品やメニューを提供できる
研修・教育	開業前後のトレーニングやスタッフ教育のサポート
仕入れルート	本部が一括して仕入れた商品を安定的に調達できる
広告・宣伝	全国規模のテレビCMやキャンペーンの恩恵を受けられる

このように、フランチャイズでは本部と加盟店がそれぞれの役割を分担しながら、ひとつのブランドとして成長していく関係性が築かれます。

本部はブランド全体の価値向上や商品開発に注力し、加盟店オーナーは現場での店舗運営に専念できるという点が特徴的です。

フランチャイズが広く普及している業種としては、次のようなものが挙げられます。

• コンビニエンスストア（セブン-イレブン、ファミリーマート、ローソンなど）
• 飲食店（マクドナルド、すき家、CoCo壱番屋など）
• 学習塾・教育サービス（公文式、明光義塾など）
• フィットネス・美容（エニタイムフィットネス、QBハウスなど）
• 不動産・住宅関連（アパマンショップ、ハウスドゥなど）
• 介護・福祉サービス（デイサービスや訪問介護など）

これだけ多様な業種でフランチャイズが採用されているのは、双方にとってメリットのあるビジネスモデルだからにほかなりません。

直営店との違いとロイヤリティの考え方

フランチャイズ店と混同されやすいのが直営店です。

見た目は同じブランドの店舗でも、運営形態には大きな違いがあります。

直営店とは、本部の企業が自ら出資し、従業員を雇用して運営する店舗のことです。

店舗の売上や利益はすべて本部のものとなり、運営に関する意思決定も本部がおこないます。

一方、フランチャイズ店は独立した事業主であるオーナーが経営しており、店舗の損益はオーナーに帰属します。

両者の違いを整理すると、次のようになります。

項目	直営店	フランチャイズ店
経営主体	本部企業	加盟店オーナー（個人または法人）
資金調達	本部が負担	オーナーが負担
売上・利益	本部に帰属	オーナーに帰属（ロイヤリティ支払い後）
従業員の雇用	本部が直接雇用	オーナーが雇用
経営の自由度	本部の方針に準拠	契約範囲内でオーナーに裁量あり
リスク負担	本部が負担	オーナーが負担

フランチャイズにおいて欠かせないのがロイヤリティという費用です。

ロイヤリティとは、ブランドやノウハウを使用する対価として、加盟店が本部に継続的に支払う費用のことを指します。

ロイヤリティの計算方法は本部によってさまざまですが、主に以下の3つの方式が採用されています。

• 売上歩合方式：月間売上の一定割合（例：売上の3〜5%）を支払う
• 粗利分配方式：売上総利益の一定割合（例：粗利の30〜50%）を支払う
• 定額方式：売上に関係なく毎月一定額（例：月額10万円）を支払う

たとえば、コンビニエンスストアでは粗利分配方式が主流であり、粗利益の40〜70%程度を本部に支払うケースが一般的です。

飲食店や学習塾などでは、売上歩合方式で売上の3〜8%程度を支払う形態が多く見られます。

ロイヤリティは単なる「取られるお金」ではなく、本部から継続的に受けられるサポートや価値への対価と考えることが大切です。

広告宣伝費の負担や商品開発、スーパーバイザーによる経営指導など、ロイヤリティには多くのサービスが含まれています。

ただし、ロイヤリティの負担が重すぎると経営を圧迫する可能性もあるため、加盟前にしっかりとシミュレーションすることが欠かせません。

フランチャイズのメリット

フランチャイズという選択肢には、独自に開業する場合にはない多くのメリットがあります。

本部のサポート体制やブランド力の活用、開業のしやすさなど、加盟を検討している方にとって魅力的なポイントを詳しく解説していきます。

これらのメリットを正しく理解することで、フランチャイズが自分に合っているかどうかを判断する材料になるはずです。

本部のサポートとブランド力を活用できる

フランチャイズの最大のメリットは、本部が築き上げたブランド力とサポート体制を最大限に活用できる点にあります。

個人でゼロからビジネスを始める場合、まずは自分のお店や商品を知ってもらうところからスタートしなければなりません。

認知度を高めるためには多大な時間と費用がかかり、軌道に乗るまでに何年もかかることも珍しくないのです。

しかしフランチャイズであれば、開業初日からお客様に認知されている状態でスタートできます。

たとえば、コンビニエンスストアのフランチャイズに加盟すれば、「あのコンビニなら安心」という消費者からの信頼をそのまま享受できるのです。

本部から受けられる主なサポートには、以下のようなものがあります。

サポート内容	具体例
開業前研修	店舗運営の基礎知識、接客マナー、商品知識などを習得
店舗設計・施工	立地調査、内装デザイン、設備導入のアドバイス
商品・メニュー開発	本部が開発した売れ筋商品を提供できる
仕入れ・物流	本部の一括仕入れにより安定した商品供給と価格メリット
広告・販促	テレビCMやチラシ、SNS広告などを本部が実施
経営指導（SV）	スーパーバイザーによる定期的な店舗訪問とアドバイス
システム提供	POSレジや在庫管理システムなどの導入支援

特に重要なのが、スーパーバイザー（SV）による継続的な経営サポートです。

スーパーバイザーとは、本部から派遣される経営コンサルタントのような存在で、定期的に店舗を訪問して売上アップのアドバイスや課題解決のサポートをおこないます。

「売上が思うように伸びない」「スタッフの定着率が悪い」といった悩みに対して、豊富な経験とデータにもとづいたアドバイスを受けられるのは心強いポイントです。

ブランド力を活用できるメリットは、集客面だけにとどまりません。

• 金融機関からの融資が受けやすくなる
• 優秀な人材を採用しやすくなる
• 取引先との交渉がスムーズになる
• 顧客からの信頼を得やすい

このように、ブランドの信用力がビジネスのあらゆる場面でプラスに働くのです。

個人で同等の信用力を築くには、長い年月と実績の積み重ねが必要になります。

フランチャイズであれば、その信用力を「借りる」かたちで、スピーディーにビジネスを展開できるというわけです。

未経験でも起業しやすく資金調達面も有利

フランチャイズのもうひとつの大きなメリットは、業界未経験でも独立・開業しやすいという点です。

飲食店を開業しようとした場合、通常であれば調理技術やメニュー開発の知識、店舗オペレーションのノウハウなど、習得すべきスキルが数多くあります。

それらを身につけるために、何年も修業を積んでから独立するというのが従来の流れでした。

しかしフランチャイズでは、本部が用意したマニュアルや研修制度によって必要な知識を短期間で習得できます。

調理経験がなくても飲食店のオーナーになれたり、教育業界で働いたことがなくても学習塾を経営できたりするのは、体系化されたノウハウの提供があるからにほかなりません。

実際、多くのフランチャイズ本部では、加盟者の7〜8割が業界未経験者というデータもあります。

脱サラして新たなキャリアをスタートさせたい方や、定年後のセカンドキャリアを考えている方にとって、フランチャイズは現実的な選択肢となるのです。

資金調達の面でも、フランチャイズには有利な点があります。

資金調達の観点	フランチャイズの優位性
金融機関の評価	実績のあるブランドの加盟店として信用力が高まる
事業計画の作成	本部が収支シミュレーションや計画書作成を支援
自己資金の目安	業種によっては100〜300万円程度から開業可能
融資制度の活用	日本政策金融公庫のフランチャイズ向け融資なども利用可能
本部の保証	一部の本部では金融機関への紹介や連帯保証を提供

日本政策金融公庫の調査によると、新規開業者のうち約6割が開業資金の調達に苦労したと回答しています。

金融機関は融資の審査において、事業の実現可能性や返済能力を重視するため、実績のない個人事業には慎重になりがちです。

その点、フランチャイズであれば過去の加盟店の実績やブランドの知名度が信用力の裏付けとなり、融資を受けやすくなるのです。

また、開業資金を抑えられる点も見逃せません。

独自に店舗を構える場合、物件取得費や内装工事費、設備投資などで1,000万円以上かかることも珍しくありません。

しかし、フランチャイズの場合は以下のような理由から、初期投資を抑えられるケースがあります。

• 本部が物件を紹介してくれるため、不動産探しの手間とコストが省ける
• 内装や設備がパッケージ化されており、効率的に導入できる
• 居抜き物件や小規模店舗のモデルを選べば、さらに低コストで開業可能
• 一部の本部では、加盟金の分割払いや減額制度を設けている

もちろん、加盟金やロイヤリティなどフランチャイズ特有の費用は発生しますが、トータルで見たときのリスク軽減効果は大きいといえるでしょう。

フランチャイズのデメリット

フランチャイズには多くのメリットがある一方で、知っておくべきデメリットも存在します。

加盟を決める前にデメリットをしっかり理解しておくことで、開業後のギャップを防ぎ、より良い判断ができるようになります。

ここでは、フランチャイズの主なデメリットについて詳しく解説していきます。

ロイヤリティ負担による収益性の課題

フランチャイズの代表的なデメリットとして、ロイヤリティの支払いによる収益性への影響が挙げられます。

ロイヤリティは本部のサポートやブランド使用の対価として支払うものですが、毎月継続的に発生する固定費となるため、経営を圧迫する要因にもなり得ます。

たとえば、売上歩合方式で「売上の5%」をロイヤリティとして支払う契約の場合、月商500万円であれば毎月25万円が本部に支払われることになります。

年間に換算すると300万円という大きな金額です。

粗利分配方式のコンビニエンスストアでは、さらに負担が大きくなるケースもあります。

業種別のロイヤリティ目安は以下のとおりです。

業種	ロイヤリティの方式	目安となる割合・金額
コンビニエンスストア	粗利分配方式	粗利の40〜70%
ファストフード	売上歩合方式	売上の3〜6%
学習塾	売上歩合方式	売上の5〜10%
フィットネスジム	定額方式または売上歩合	月額5〜30万円、または売上の3〜8%
不動産仲介	売上歩合方式	売上の10〜20%
買取専門店	定額方式	月額10〜30万円

ロイヤリティ以外にも、フランチャイズ特有の費用負担があることを忘れてはいけません。

• 加盟金：契約時に支払う一時金（50〜300万円程度が一般的）
• 保証金：契約期間中に本部に預ける金額（解約時に返還される場合あり）
• 広告分担金：本部がおこなう広告宣伝費の一部を負担（月額数万円〜）
• システム利用料：POSレジや発注システムなどの使用料
• 研修費：開業前後の研修にかかる費用

これらの費用をすべて合計すると、売上の10〜15%程度が本部関連の支払いに消えるというケースも珍しくありません。

独立開業であれば自分の利益になっていたはずの金額が、フランチャイズでは本部への支払いに回ることになるのです。

収益性を確保するためには、以下のポイントを事前に確認することが重要です。

• 損益分岐点：月間どのくらいの売上があれば黒字になるか
• 既存店の実績：同規模の加盟店がどの程度の利益を出しているか
• ロイヤリティの上限：売上が増えたときにロイヤリティがどこまで増えるか
• 契約期間と更新条件：長期的な収支見通しが立てられるか

本部が提示する収支モデルをうのみにせず、複数のパターンでシミュレーションすることが大切です。

運営の自由度が低く制限が多い

フランチャイズのもうひとつの大きなデメリットは、経営における自由度が低いという点です。

フランチャイズはブランドの統一性を保つことで価値を維持しているため、加盟店オーナーが独自の判断で自由に運営することには制限がかかります。

具体的には、以下のような面で本部の方針に従う必要があります。

制限される項目	具体的な内容
商品・メニュー	本部が指定した商品のみ販売可能。独自メニューの追加は原則不可
価格設定	本部が決めた価格で販売。値引きや価格変更は制限される
営業時間	24時間営業や深夜営業など、本部の方針に従う必要がある
内装・外装	店舗デザインは本部の基準に準拠。勝手な変更は認められない
仕入れ先	本部指定の業者からのみ仕入れ可能。独自ルートは使えない
販促活動	本部の承認なしに独自のキャンペーンをおこなえない
出店エリア	テリトリー制により、出店できる地域が限定される場合がある

「自分のアイデアで店舗を改善したい」「地域のニーズに合わせた商品を提供したい」と思っても、契約上それが許されないケースが多いのです。

たとえば、飲食店のフランチャイズに加盟した場合、「この地域では辛い味付けが人気だから、オリジナルの激辛メニューを出したい」と思っても、本部の許可がなければ実現できません。

また、仕入れ先が指定されていることによるデメリットもあります。

近隣にもっと安くて品質の良い仕入れ先があったとしても、本部指定の業者を使わなければならず、コスト削減の自由度が限られるのです。

特にコンビニエンスストアでは、仕入れの制約に関するトラブルが社会問題化したこともありました。

運営時間に関しても、本部と加盟店の間で意見が対立するケースがあります。

深夜帯の人手不足や採算性の問題から営業時間を短縮したいと考えても、契約上24時間営業が義務付けられている場合は簡単には変更できません。

さらに、契約終了後の競業避止義務にも注意が必要です。

多くのフランチャイズ契約には、契約終了後一定期間（1〜3年程度）は同業種での独立開業を禁止する条項が含まれています。

• 契約期間中に培ったノウハウを活かして独立したいと思っても、すぐには実現できない
• 競業避止義務に違反すると、損害賠償を請求されるリスクがある
• せっかくの経験が次のビジネスに活かせない期間が生じる

このように、フランチャイズは**「独立」といっても完全な自由があるわけではない**という点を理解しておく必要があります。

「自分の裁量で経営したい」「オリジナリティを出したい」という志向が強い方にとっては、フランチャイズの制約がストレスになる可能性があるでしょう。

加盟を検討する際には、契約書の内容を細部まで確認し、どこまでの自由度があるのかを事前に把握しておくことが大切です。

まとめ

この記事では、フランチャイズのメリットとデメリットについて詳しく解説してきました。

改めてポイントを整理すると、以下のようになります。

フランチャイズのメリット

• 本部のブランド力を活用して、開業初日から集客が見込める
• 未経験者でも体系化されたノウハウで起業しやすい
• スーパーバイザーによる継続的な経営サポートを受けられる
• 金融機関からの融資を受けやすく、資金調達面で有利
• 仕入れや広告を本部が担うため、店舗運営に集中できる

フランチャイズのデメリット

• ロイヤリティや加盟金などの継続的な費用負担がある
• 商品、価格、営業時間などに本部の制約を受ける
• 経営の自由度が低く、独自のアイデアを実現しにくい
• 契約終了後も競業避止義務により、同業種での独立に制限がある

フランチャイズは、独立開業のリスクを軽減しながらビジネスをスタートできる優れた仕組みです。

しかし、すべての人に適しているわけではありません。

「自分の裁量で自由に経営したい」という方には窮屈に感じる面もあるでしょう。

大切なのは、メリットとデメリットの両方を正しく理解したうえで判断することです。

加盟を検討する際には、複数のフランチャイズ本部を比較し、契約内容やサポート体制、既存オーナーの声などをしっかりと確認してください。

焦らず情報収集を重ね、自分に合ったフランチャイズを見つけることが、成功への第一歩となるはずです。